日本スペンサー協会会報 第22

20101020日発行      861-8068 熊本市清水万石1-5-32 福田方

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1001 会計報告 昨年度決算と本年度予算は4月の会員宛通知の通りです。決算は、収入161,503円、支出20,050円で、141,553円の繰越になりました。会費納入は夏期オリンピックの年ごとに5,000円、退職者は免除になっています。最近、山田耕士氏から2期分の納入がありました。在職中会員で今から納入希望者は、日本スペンサー協会の下記口座へ払い込みください。全国の金融機関から振込ができます。

           ゆうちょ銀行(金融機関コード)9900 (店番)199 

           店名(カナ)一九九店(イチキユウキユウ店)

           (預金種目) 当座   (口座番号) 0025355

           (カナ氏名) ニホンスペンサーキヨウカイ      

 

1002           協会資料を京都大学水野研究室へ 会員から本会へ寄せられた著書・論文等の学術資料は、1985年協会設立から19983までは熊本大学福田昇八研究室、以後20033月までは九州ルーテル学院大学福田昇八研究室、以後7年間は福田昇八自宅に保管されていましたが、2010年4月5日、京都大学大学院人間・環境学研究科共生文明学専攻水野真理研究室宛、段ボール4箱、ゆうパックで発送されました。

 

1003           ホームページ管理者変更 本年4月から日本スペンサー協会ホームページ管理者が水野真理氏になりました。本会のホームページは2001年、コンピュータ専門家リチャード・マクナマラ氏の尽力により、カナダの下記サーバーをホストとして開設されました。マクナマラ氏は都合により退会しましたが、ケインブリッジの国際スペンサー協会ホームページへの接続、フォーラム欄など数々の工夫など、日本語ばかりでなく国際的にも使える仕組みを構築してくれました。会員の利用は殆どない状態でしたが、長年にわたる熱心な貢献に感謝します。これからは新管理者の下、会員の積極的利用が望まれます。

          

                     

1004           今西雅章氏に41回河竹賞 20096月、大阪市立大学で開催された日本演劇学会の席上、今西雅章氏に『シェイクスピア劇と図像学―舞台構図・場面構成・言語表象の視点から』(彩流社、2008年)の業績を称え第41回河竹賞が授与され、大会2日目に受賞記念講演『シェイクスピア劇における聴覚的なるもの、視覚的なるもの』が行われました。

 

会員業績

 

1005            本間須摩子 2009 「『蝶の運命』——主人公の呼び名に託されたもの」

     英米文学語学研究会論集 135-15

1006            今西雅章 2007  「『トロイラスとクレシダ』の戯画化の技法―言語表象 と舞台表象に見る伝統と創造   藤田實・入子文子編『図像のちからと 言葉のちから』 大阪大学出版会

1007            今西雅章 2008  「現代に生きるシェイクスピア―『リチャード三世』の 観どころ、読みどころ」 帝塚山学院大学文芸誌『こだはら』30

1008            今西雅章 2009  「現代に生きるシェイクスピア―『コリオレーナス』  の民衆と護民官」 帝塚山学院大学文芸誌『こだはら』31

1009            今西雅章 2010a 「血に染められた短剣の行方―『マクベス』の第二幕二 場と第五幕一場」帝塚山学院大学文芸誌『こだはら』32

1010            今西雅章  2010b 「シェイクスピアはわれらを映す鏡―『ジュリアス・

        シーザー』の追悼演説の場の意味するもの」 Kwansai Review 27

関西英語英文学会大会(200812月、大阪産業大学梅田サテェライト・スタディオ)の特別講演を拡充したもの。

1011 岩永弘人 2010 『ペトラルキズムのありか――エリザベス朝恋愛ソネット論』 音羽書房鶴見書店

 トマス・ワトスン、バーナビ・バーンズというマイナーなソネット詩人から、シドニー、スペンサー、シェイクスピアにいたるまでのエリザベス朝連作ソネット集をとりあげて論じたもの。ソネット形式の誕生の地とされるシチリアからトスカナ、そしてプレイアード派などの大陸でのソネット史を概観し、それぞれのイギリスの 詩人がどのようにペトラルキズムを自分の詩に取り入れて行ったかを考察した。エリザベス朝ソネット研究の基本図書解題を含む。

1012 岩永弘人 2010 「二者択一のアレゴリー 『妖精の女王』第212歌の海が示すもの」 ルネッサンス研究会 Quattro Canti 4:31-44

1013 小迫 勝  2009 「『妖精の女王』における脚韻語のコロケーション」 

        堀正広・浮網茂信・西村秀夫・小迫勝・前川喜久雄著『コロケーションの通時的研究―英語・日本語研究の新たな試み』(ひつじ書房)97-143

         拙著1995の日本語版に新たな記述を加えたもの。

1014 小迫 勝 2010 「中学校教材としてのナーサリ・ライム―ことばの芸術を分析・鑑賞する手法」 小迫勝・瀬田幸人・福永信哲・脇本恭子編著『英語教育への新たな挑戦―英語教師の視点から』 英宝社 17-31

         英語学・英米文学の研究が中学校・高校の英語教育現場にどのように 献しうるのかについての試論集の一編。

1015 水野眞理 2010a 「スペンサーの三つの「声」―牧歌詩人としてのライフとキャリア」『英文学評論』 821-28

       2009年度日本英文学会シンポジアム原稿に手を入れたもの。

1016  水野眞理 2010b  翻訳『一五九六年、エドマンド・スペンサー氏によりユードクサスとアイリニーアスの対話の形で書かれたるアイルランドの状況管見』(五) 『文学と評論』 3.746-66

1017 村里好俊 2010a 「シェイクスピア作『ルークリースの凌辱』訳と注解」

        熊本県立大学紀要
1018  村里好俊 2010b 『映画で楽しむイギリスの歴史』 金星堂

1019     根本泉 2010 「『ナルニア国年代記』における「巡礼」のモチーフ――

        スペンサーの影響をめぐって」  『キリスト教文学研究』 27112-122

        CS・ルイス『ナルニア国年代記』全7巻の中でロマンスの要素を持つ 4つの巻の「巡礼」のモチーフについて、『妖精の女王』第1巻と第7巻の           「新しいエルサレム」と「巡礼」の影響を考察した。

1020 竹村はるみ 2008  「シェイクスピアは蘇るのか?―評伝研究の現在 Shakespeare News 47:3, 12-19

1021 竹村はるみ 2010 「レスター王国の出版戦略」 Albion 56号(掲載予定)

1022 山田耕士(幹郎)  2010  「『文學論』における批評家」 Evergreen 32:11-27

1023 山内正一 2009 「キーツとスペンサー」 福岡大学研究部論集人文科学篇     9.69-23 (寄贈論文)

 

会員近況

1024 浅井紀代 最近研究から遠のいてしまい、恥ずかしく思っておりますが、 間をみつけて少しずつでも勉強を続けたいと思っております。

 

1025 藤井良彦 5年前、75歳で現役をリタイヤーしてからは、英語とはすっかり縁がなくなり、只今は肥後狂句という当地で江戸時代以前から行われている地方文芸を同好の士と楽しんでいます。川柳の地方版のようなものですが、五七五の頭を笠といってこれが出題され、この下に七五(五七でも可)を付けて競う短文芸です。これにはまり込んで30数年経ちましたが、今年は6月にあった熊本日日新聞主催の大会で準優勝し、仲間から祝福されました。近作を幾つか紹介します。

         ひとり旅 明日はねぶたか竿灯か

         詳しさが 狭斜に生まれ育ったっ

         入り乱れ 盤上は狼藉の駒

         無愛想 役職らしゅうなって来た

         吊し柿 目つぶれば蘇る里  

         レジ袋 彼との鍋が待っている

 ところが「禍福は糾える縄の如し」この7月から体調を崩し、大学病院で精査してもらって膵臓ガンと分かりました。正に青天の霹靂。病巣も割合大きく転移もしていて手術が出来ず、抗ガン剤の点滴を3週間ワンクールでしてもらっています。食欲がないので体重が10キロ落ちて体に力が入らず、これが一層の困り者ですが、痛みのないのが幸いです。昔読んだのを思い出して、いま中里恒子の『時雨の記』を再読しています。この主人公ほどに積極性も財布もないけれど、気力だけは負けないようにして、しっかり余生を生きて行きたいと思っています。

         まだ死ねん ガンよ一っ時眠っとれ

 

1026 福田昇八 『妖精の女王』七五調訳がようやく最後まで辿り着き、昨年はまた最初から見直し作業を行い、さらに3回目の見直しがこの春に終りました。出版社が決まればいいがと願っています。一方、チョーサーの「時は四月の春雨が」からディラン・トマスの「穏やかに逝くなあの世へ」まで、英米詩の美味しい所を集めた韻文訳名詩選を『孤独の楽しみ』と題して出そうと意気込んでいますが、軒並み断られ、今は僥倖待ちの状態です。10月にはライシャワー教授との会見から37歳のとき始めた熊本県英語教員集中研修会の40周年を記念して昔の仲間と集まりました。

 

1027 本間須摩子 今現在は、仕立屋の息子であったスペンサーの服飾へのこだわりを調べていまして、今年の春にイギリスへエリザベス調のテキスタイル          のコレクションなどを見に行って参りました。スペンサーへの興味は広がっていく一方で、研究と仕事との時間のバランスが難しいなあと感じる毎日です。

 

1028 壹岐泰彦 早いもので退官してから10年が経ちました。昨年3月で教職から身をひき悠々自適の毎日です。年に一度ヨーロッパに出かけアルプスのトレッキングなどを楽しんでおります。

 

1029 今西雅章 今は帝塚山学院大学のコミュニティ・カレッジで、8回シリーズで『ハムレット』を聴講の方々と読んでおります。この劇は何度読んで 新しい発見があるものですね。

 

1030 川西 進 フェリスのオープンカレッジ講師を勤めています。

 

1031 小紫重徳 晴耕雨読と言いたいところですが、彼岸までは戸外での作業は日が陰ってから鉢植えの水掛けや庭や畑の草取りをする程度でした。3 に『英文学研究』87号用の書評を提出しましたので、以後フランス語やイタリア語に専心し、数年前に20編ほどで中断していたCanzoniereを改    めて読み始めました。音韻的に促音がやたらに多いイタリア語を前にして        苦吟していますが、今度はどこまで読み進められるでしょうか。

 

1032 小迫 勝  20093月に岡山大学を定年退職して以来、比較的ゆっくり 時間が流れています。近隣のいくつかの大学で午前中に1コマだけ授業し て、あとはテニス、囲碁、マンドリン合奏などを楽しんでいます。今年の夏はイタリアの各地を訪れ、歴史的遺産や人情・風物に触れてきました。

 

1033 水野眞理 ホームページ管理を引き受けることになりましたが、私自身がホ ームページ作成の知識を学んでいる途上で、まだいじれるところまで来ていません。使いやすいホームページにしたいと思います。また、会員業績なども私の大学の研究室でお預かりすることになりました。これまでタイト ルのみで知っていた論文を読むことができるようになり、感激しております。希望がありましたら、コピーもできますので、ご連絡ください。
 個人
的には、『アイルランドの状況管見』の翻訳を進め、今年は二つの雑誌に発表し、あと少しのところまで来ました。当時のアイルランド統治の実態    に不明なことが多く、注に苦労しています。完成したら、単行本にします。    
 8
月にはアルジェリアに出張しました。同国から昨年京都大学を訪れていた英語教育の専門家Neddar博士の招きをうけ、首都アルジェから 400ロ西の地中海岸の都市MostaganemMostaganem大学を訪問しました。アルジェリアは中近東・北アフリカ地域の共通語であるアラビア語をメインとし、フランスの植民地であった経緯から、フランス語も使われます。高校まではアラビア語で、大学(進学率60%)ではフランス語で教育が行われ、フランス語を話せる人も多くいます。英語が外国語である点では日本と似ていますが、大学の英語教育は成果を上げているようでした。イスラム教徒が大半の土地で10日ほど過ごしましたが、スペンサー世界のような残酷で粗暴な「異教徒」に遭遇することはありませんでした。

 

1034 村里好俊 勤務先で、四月から英語英米文学専攻博士課程が発足しました。 英文学分野では、ミルトンを専攻する九州大学修士課程を出た女性が博士後期課程に入学しました。この三月に「シドニーと同時代の詩人たち」により、文学博士(大阪大学)を取得しました。目下、『グラバー伝』と『新訳シェイクスピア詩集』の翻訳出版に取り組んでおり今年中には二冊とも上梓の予定です。

 

1035 根本 泉 昨年秋より勤務先での委員会等の公務が忙しくなり、研究に十分な時間がとれずにおります。今年の春には、スペンサーとCS・ルイスに関する小論をまとめました。8月には、以前に在外研究で滞在したアマストを再訪し、スミス・カレッジのウィリアム・オーラム先生と昼食の時を持つことができ、いろいろとアドヴァイスをいただきました。後期が始まりましたので、授業を大事にしながら、小さな時間を継続して研究に専心していければと願っております。

 

1036 小田原謠子 ここ数年、勤務先で、中世、ルネサンス、レストレーションあたりまでの文学作品と現代までの詩を担当している英文学史の講義で、「教えることは学ぶこと」を実感しております。秋の学期に名古屋大学の比較的小さいクラスで、スペンサーの評論を読みます。実り豊かなものになればいいと思っております。

 

1037 大芝香織(新入会) 福岡女学院大学短期大学部講師をしています。熊本県立大学の村里先生のおすすめで入会させていただきました。Sidneyの作品について研究していましてスペンサーについては大学院時代に『羊飼いの暦』の一部を読んだだけで知識は浅いですが、Sidneyとの関連も強い作家なので興味があります。秋のシェイクスピア学会で発表予定です。

 

1038 島村宣男 この3月末をもって、勤続35年の関東学院大学を規程にしたがって停年退職しました。この先5年間、特約の専任教員として勤続が可能です。とにかく、役職就任や教授会出席が免除されてありがたく、まさに「黄門様のご身分」を享受しています。現在、関東学院大学のホームページから文学部に入ると、「文学部教員コラム」という特設コーナーに私のエッセイ「ミルトンの影」が連載されています。昨夏のイタリア訪問中に撮影した映像が好評です。是非御笑覧下さい。この10年間、スペンサーは大学院で「読む」だけで、「書く」ことを忘れています。「書く」ことの関心はミルトンに移行して、ほとんど止まらない状態です。この5年間で、その成果を1本にまとめられれば、と考えています。

 

1039 鈴木紀之 昨年の英文学会でのシンポジウムでの発表を展開して、ロングマン版The Faerie Queene再版のTextual Notesの追補として、13巻の主要な異同についての編集者の判断根拠をまとめています。9月に名古屋シェイクスピア研究会で「シェイクスピアから見た能/能から観たシェイクスピア」と題する公開シンポジウムの運営・実施に当たりました。一般市民の参加もあり、盛況でした。

 

1040 竹村はるみ  立命館大学の文学部に転任して3年目になります。講義はやりがいがありますが、予習が大変です。現在は、スペンサーの評伝研究に端を発し、レスター・サークルと呼ばれるレスター伯を中心とする知的・政治的ネットワークに関する研究を行っています。その一方、エリザベス朝騎士道ロマンスに関する研究も続けています。

 

1041 田中 晉 山口大学を定年退職後早や4年が経過しようとしています。丁度4年前に設置された私立山口学芸大学に職を得て、以来毎日朝から晩まで勤務という超規則正しい生活を送っています。いろいろと異文化も体験しましたが、肝腎のスペンサーには時折細切れの時間しか割けないのが残念です。悠々自適、晴耕雨読を夢見ながら未だ果たせぬ現状です。

 

1042 山田耕士(幹郎)  愛知淑徳大学文学部を来春定年ですが、町内のお役で敬老会や秋祭りの行事を進めるという別種の勉強中です。

 

1043 訃報住田幸志先生 本年1月3日、住田先生が急性虚血性心疾患のため逝去されました。ご子息からの手紙では、普段通りの眠りにつく形で、安らかなる永遠の眠りにつかれた由です。先生は退職後も古典からルネサンスまで幅広い書籍文献研究を意欲的に進められ、英文学に限らず文学全般、そして各地の文化・文物にも強い関心をお持ちでした。実際、これまで会報      に寄せられた先生の近況報告は、深い学識と思索、そして尽きせぬ知的好奇心に満ちたもので、毎号の寄稿文が楽しみでした。残念ながら先生と実際にお目にかかる機会は得ませんでしたが、一度だけ電話を頂いたことがあり、温かく、誠実なお人柄がしのばれるお話ぶりとともに、「僕は阪神タイガースの大ファンでしてね。」と気さくな自己紹介を頂きましたことを印象深く覚えております。本協会への先生のご協力に改めて感謝致しますと共に、心よりご冥福をお祈りします。       (足達賀代子)

 

1044 本部からの連絡 

        1)次頁に本会の会則(1993年改訂)を掲載します。

        2)本号は足達氏の尽力により、多くの記事が集まり、編集が一気に進み          ました。秋は会報の時期です。今後とも全員参加の編集に一筆啓上を。

        3)会員業績欄の情報提供は、号数・ページ数まで記入願います。

        3)この会報は、これまで同様足達氏の手により、メール配信または郵送          により届けられます。

        4)業績の送付や   記載漏れ・訂正などは下記へ。

           651-2276 神戸市西区春日台9-11-45 足達 賀代子

      ave.pia.humilitas@movie.ocn.ne.jp


日本スペンサー協会会則

1.            本会は、日本スペンサー協会と称し、その英語名をThe Spenser Society of Japanとする。

2.            本会の本部は、原則として会長の所属する大学に置く。

3.            本会には、スペンサーに関心を持つ者は、誰でも加入することができる。

4.            本会の会員は、別に定める年会費を納入する。ただし、定年退職者には、年会費の納入を免除する。

5.            本会の会員は、スペンサー関係の論文・著書一部を、出版ごとに本部へ寄贈する。

6.            本会の役員は、次の通りとし、再任を妨げない。              

        顧問1名、会長1名、副会長1名、理事若干名

7.            役員の任期は4年とし、オリンピックの年ごとに選出する。

8.            本会は、次の各号の事業を行う。

1) 会報の発行。

2) スペンサー文献目録の作成。

3) 研究会の主催。

4) 海外のスペンサー関係学会との交流提携。

5) その他、スペンサーの周知とスペンサー学の発展に寄与すること。

9.            本会の会計は、1月から12月とする。

 

付則

1.            この会則は、199371日から施行する。

2.            会費は、年額1,000円とする。

 

改訂(1996年)

1. 会費は、オリンピックの年ごとにまとめて5,000円とする。