Spenser Society of Japan 日本スペンサー協会 本文へジャンプ

日本スペンサー協会会報 17号 2005.6.10

日本スペンサー協会 www.spensersocietyjapan.org 2005 年6月10日発行
861-8068 熊本市清水万石1?5?32 
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05-01 年次総会報告 2005年度総会は、5月22日(日曜)午後1時から、日本大学
文理学部百周年記念会館 会議室1において会員18人が出席して開かれ、下記の通り承認されました。会場の利用について特別の便宜をはかっていただいた日本英文学会第77回大会当番校(野呂有子教授)のご配意に厚く感謝いたします。

(1) 2004年度決算
収入 繰越 220,201円  
  納入会費 130,000円 (5000円 x 26人)
  合計 350,201円  
支出 ホームページ 48,413円 (2008年5月までの分)
  雑費 13,380円  
  合計 61,713円  
(2) 2005年度予算
  収入 繰越金 288,408円  
  支出 雑費 30,000円  

(3) 創立20周年記念論集の発刊について

  • 来年3月刊行を予定し、9月30日を原稿提出期限とする。
  • 第1部はスペンサーの研究論文、第2部は協会の歩み
  • 原稿は山下宛添付ファイルで提出する。原稿作成と提出の詳細は本 号に転載)。 ファイル送付先: hybiblio@js3.so-net.ne.jp
  • 出版助成金の交付が困難視されるため、執筆者の負担がなるべく少ないよう完成組版して出版社渡しとする。
  • 文献目録は『詩人の王スペンサー』に集録されたものを含めて、より完全な目録となるよう、会報で会員に資料提出を依頼する。
  • 今後の投稿希望者は山下に連絡する。

05-02 全会員へのお願い (1) 記念号に収載する個人別のスペンサー文献目録は、完璧を期すため、本人 らの情報提供によって行われます。この目録は日本に於けるスペンサー研究の成果を記録するためのもので、他の作家を論じたものは収載されません。『詩人の王』以降の(または漏れている)スペンサー関係の書籍/論文の出版年・掲載誌名・号数・ページを、下記の目録担当者宛メールまたは手紙で8月までにお知らせ下さい。提出された資料は編集者で統一します。shima@nd.catv.ne.jp 223-0062 横浜市港北区日吉本町3-23-1 島村宣男
(2) 執筆の詳細について、同封の編集者からの便りをご覧下さい。
(3) この会報は足達嘉代子氏の所から発送されます。最新の名簿が同封されています(訂正等がある場合は同氏へ)。 

05-03 記念論集の刊行へ向けて 本会では創立10周年には24人の会員の協力を得て500ページを超す論集を刊行しました。あれは各人のスペンサー論文のうち、最も重要と考える論文を中心に編集したもので、当時の我が国のスペンサー研究の姿を示すことを目指したものでした。そのために相当のレヴェルに達した書として世人の好評を得たと思われます。今回はすべて書き下ろし論文となりますが、新進研究者からの寄稿も大いに歓迎される所です。ただし、レフェリー付きの論集として、然るべき評者の推薦によって採否が決まります。この本の刊行にあたっては、すべての会報記事が島村氏の手ですでにパソコンに打ち込まれ、写真とともに準備されています。会員近況など、読み捨てられる運命にあるものが、こうした形で貴重な証言として後世に残ることになります。すでに山下氏を助けて水野氏が編集に当たることになっています。原稿は修正等の作業を年内に終えて1月に印刷所渡し、2月校正の予定で進行すると思われます。

05-04 ハミルトン新版にマッキャフリー賞 国際スペンサー学会にThe Isabel G. MacCaffrey Book Prizeが創設されました。これは3年ごとに最優秀スペンサー図書を選定して表彰するもので、その第1回(2001-2003)受賞図書としてハミルトン新版 The Faerie Queene が選ばれ、その授賞式が昨年12月30日ニューヨークで開かれた学会の席上行われました。ただし残念ながら、日本人の本文校訂者はもとより、ハミルトン教授も夫人の看病のため出席できず、後で賞碑と副賞300ドルが送達されました。

05-05 ちくま文庫版『妖精の女王』刊行開始 和田勇一・福田昇八訳『妖精の女王』(筑摩書房、1994年刊)のちくま文庫版全4巻の刊行が4月から始まりました。1は第2巻第8篇までの本文と「ローリへの手紙」と訳者解説を含み、2は第3巻末までです。すでに3までが出版され、7月10日発行の4で完結となります。これは単行本のままの文庫化ではなく、句読点をスミス版に厳密に一致させたほか、内容的にはハミルトン新版を参考に全行を見直した改訂版で、今後は日本語訳引用の標準版となります。なお、「ちくま」5月号 (No. 410)に作家ひかわ玲子氏による書評「妖精たちはここから舞い降りた」が載っています。

05-06 平井正穂教授逝去 英語青年7月号の特集記事でご存知の通り、平井正穂教授がこの2月、93歳で永眠されました。初任地の新潟で「死に物狂いで『妖精の女王』を読んだ」とよく口にしておられた平井先生は、故和田勇一教授とは大学以来の友人でもあり、郷里の熊本の地に於いてスペンサーの翻訳と研究が花開いたことを特に喜びとされ、われわれの活動を暖かく見守っていただいた師でありました。スペンサーについての論文は1本ですが、機会があれば何かまとめてみたかったと福田宛の最近の私信で述べておられます。もう少し早く、平井論文をわれわれの20周年論集に特別寄稿してもらうべきであったと、今になって悔やまれます。文学研究の基礎は本文の精読という信念を持った偉大なる老師の死に、謹んで冥福を祈ります。

会員業績 (ABC順)

05-07 福田昇八 “The Numerological Patterning of The Faerie Queene I-III.” Spenser Studies: A Renaissance Poetry Annual. 19(2004), 37-63.

05-08 今西雅章 「『オセロー』における聖なる次元」 関西外国語大学研究論集 78(2003): 23-37.

05-09 小紫重徳 「エリザベス朝の国家主義文化の諸相(1) 国家と国家教会の伝統の創造」 神戸大学国際文化学部紀要  7 (1997): 47-75.

05-10 小紫重徳 「エリザベス朝の国家主義文化の諸相(2) 国語の確立」 神戸大学国際文化学部紀要 8 (1997): 31-59.

05-11 小紫重徳 「エリザベス朝の国家主義文化の諸相(3) 過去の記憶と規範」 神戸大学国際文化学部紀要  14(2000): 1-23.

05-12 小紫重徳 「ルネッサンス期ヨーロッパの伝統と模倣の系譜」 神戸大学英文学会 Kobe Miscellany 27(2002): 1-12.

05-13 村里好俊 「『オールド・アーケイディア』詩集(完)」 福岡女子大学文学部 紀要『文芸と思潮』69(2005): 35-81.

05-14 村里好俊 「クリストファー・マーロー『ヒアロウとリアンダー』 訳と注解」Kasumigaoka Review 11(2005): 15-49.

05-15 岡田岑雄 「『ハムレット』の受容をめぐって 覚え書(そのー)」 松蔭女子大学紀要 4 (2004): 93-100.

05-16 岡田岑雄 「『ハムレット』の受容をめぐって 覚え書(その二)」 松蔭女子大学紀要 5 (2005): 127-136.

05-17 竹村はるみ 「ロマンシング・ロンドンーエリザベス朝末期における大衆騎士道ロマンス」 日本英文学会『英文学研究』81(2005): 109-122.

会員近況

05-18 足達賀代子 昨年は名簿に誤字や、山下先生や島村先生のメールアドレスミスがありましたが、協会のお役に立てて嬉しいです。会員の皆様、また何かとお教えください。

05-19 福田昇八 クリスマスから5月連休まで、久しぶりで「死に物狂いで」文庫版の校正に没頭しました。和田教授亡き後、今回は初めて全行を原文と照らし合わせて改訂しました。文理版は冗長という意見がありましたが、文庫版では引き締まってきたと思います。5月には、ハミルトン先生に勧められてアドーニスの園に関するインタネット討論に参加しました(Sidney-Spenser discussion list で検索)。3.6.43.1の”Right in the middest”が3巻の中心を示すことは周知ですが、45連が初版も2版も8行なのも中心のページを示す作者の目印であると論じたもので、ハミルトン先生からExcellent!とメールが来ました。この論は初版本を見て初めて可能になったことで、山下先生のCDは、こういうとき役に立ちます。皆さんもご確認ください。

05-20 本間須摩子 日大の総会会場に早く行って資料配布などを手伝い、爽やかな気持ちで帰りました。「若者よ、皆のために働け」との会長の呼びかけは私の胸に響きました。私は何でもいたしますので、どうぞお申し付け下さい。

05-21 小紫重徳 学部改組でヨーロッパ文化論が廃され、今年度から異文化コミュニケーション論講座で越境文化論を担当することになりました。スペンサーを核にして、ウェルギリウス、ペトラルカ、クレマン・マロ、デュ・ペレの影響関係を調べていきたいと思っています。ただし、学生が集まるか、それが問題です。

05-22 小迫 勝 今年3月まで付属中学校との併任が3年間続きました。集中してスペンサーを読むことが出来ませんでした。連絡事項にも満足に対応できずに失礼をしていました。

05-23 根本 泉 総会の席で、事務手伝いは何でもしますと申し出ました。

05-24 小田原謡子 私は2003年9月から1年間、ケインブリッジ大学 Newnham Collegeで研修の機会が与えられ、 Dr. Colin Burrowと Dr. Lyne の指導を受ける幸運に恵まれました。スペンサーが過ごした土地での生活で、私はいささかおおげさな表現をすれば、衝撃を伴う発見をし、文学を、それが生まれた状況の中でとらえることの大事さを思いました。スペンサーは後半生をゲールの世界という地にあって、ヨーロッパの知的伝統の中で詩を書いたのです。私は詩の美しさに陶然としているのですが、彼が知的伝統を受け継いだその受け継ぎ方、そしてその表し方に、彼の経験が関わっているのではないかと思い、そのことも考えたいと思っております。

05-25 早乙女 忠 最近出た『オベロン』に「エヴァとベアトリーチェ」を寄稿しました。王制批判者のミルトンがなにゆえ女王を称える詩人に傾倒するのか気になっていました。最近入手したDoran and Freeman, editors, The Myth of Elizabeth (Palgrave MacMillan,2003)中でAndrew Hatfieldが、スペンサーは女王批判者であるとの見解を記していて興味を覚えました。「ミルトンとスペンサー」を次に書ければと考えています。オベロン会は新人が加わり継続しています。

05-26 山下 浩 私の所蔵する初版本CDを希望の会員には無料提供し、喜んでいただきました。

 



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